- 使用人兼務役員とは
役職には「取締役営業部長」のような肩書を与えられている方がいます。こういった方は、役員でありながら従業員としての立場でもある方です。
こういった方のことを、法人税法では使用人兼務役員と呼んでいます。
それでは、法人税法はどのように扱うこととしているのでしょうか。
まず前提として、役員に対する役員給与は、原則として定期的に同額を支給していないと、損金不算入となってしまいます。
前月は100万円だったけれど今月は150万円出す、とすると差額50万円は損金不算入です。
ボーナスも原則、全額が損金不算入です。
しかし、従業員としての立場で考えると、部の目標を達成したらボーナスが出たりもします。
この場合、取締役兼部長に対するボーナスは損金不算入となってしまうのでしょうか。
- 役員としての給与と従業員としての給与
結論から言うと、損金の額に算入することが可能です。
ただし、従業員として(部長として)与えた目標を達成し、他の部長と同じボーナス算定ルールに基づいて支給した、
といった、取締役の職務に対する報酬ではなく従業員としての職務に対する報酬として認められる証拠があることが必要です。 - 役員給与と使用人分給与の分け方
使用人兼務役員の給与は、一人の者に対して役員としての給与と従業員としての給与が混在しています。
これを明確に分けて計上する必要があります。
給与明細の見た目を変えればよい、ということではありません。
また、従業員としての立場を有するのであれば、労働法の影響も考慮しなければなりません。
人事政策や評価制度を整備しながら検討をすることが非常に重要です。
4.まとめ
税法の観点からすると、役員分と従業員分が明確に区別されていれば問題なし、といえます。
しかし、実務では使用人兼務役員という役職について、
人事制度をしっかり設計したうえで取り組んでいく必要があります。
役職を設けてみたが、上手く機能せず、給与の未払いが実質的に発生して訴えられた、ということがあってはいけませんので、
税法だけでなく、労働法や実際の事業運営の視点も交えて検討できると、
税理士事務所の職員としては価値の高いサービス提供となるように思っています。
勉強しながら複数の視点を取り入れるように、考えてみてもらえればと思います。
※具体的な事案に対して適用する場合は、顧問税理士等にご相談ください。
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※2024年4月1日時点の法令等に基づいて執筆していますのでご留意ください。