TOC時代の思い出

職場環境

弊社は令和4年8月に西五反田のtocビル(toc)から現在の東五反田に移転して参りました。移転の理由は、tocが老朽化のため建替えすることになったためです。今回はtocの思い出について書きたいと思います。

toc は東京卸売センターの頭文字です。昭和45年にオープンした昭和の商売人たちの息づかいを伝える場所で、卸売店から飲食店まで約400のテナント が入っていました。 toc は毎日バーゲンをしているような場所でもあり、ベンチャー企業のスタートアップとしても有名です 。例えばユニクロでおなじみのファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏が、前身の小郡商事時代に山口県から紳士服の仕入れに通っていました。ハローキティで知られるサンリオも昭和48年 から62年に本社や店舗を構えていたなど 有名企業のスタートアップに大きく寄与しています。

tocが建設される前には星一(ほしはじめ)が創業した星製薬の工場にありました。星一は星薬科大学の創設者でもあります。星製薬はワクチンを民間企業として日本で最初に製造販売したことでも知られていました。また、モルヒネの国産化に成功し東洋の製薬王と呼ばれました。そして彼の長男がSF作家の星新一です。

その後星製薬は経営が傾き、鉄鋼業を営む大谷米太郎に買収されました。大谷は東京オリンピックのホテル不足対策としてホテルニューオータニを開業させた人物です。東京オリンピック当時求められていたのは大規模な物流拠点でした 。戦後高度成長期に物価が上昇すると、政府は都内に分散する零細の卸問屋を集約して流通コスト削減しようと画策します 。この国策を実現しようとしたのが大谷で、昭和45年にtocを開業させました。約750台の駐車場や大型機械も運搬できるエレベーターなど当時としては先進的な設備を揃えていました 。

移転前、弊社は9階の北東角にありました。周りのテナントはインテリアの卸会社、アフリカ雑貨を扱うお店、家具店、測量機器の会社などがありました。1階には前述のユニクロやローソン、郵便局までありました。また、地下にはレストラン街や100円ショップがあり、tocで用事が完結してしまう一種の街でした。

ただ、五反田駅から徒歩で10分以上かかり、送迎バスも出ていましたが天気が悪い日は不便でした。またビルの古さは否めませんでした。移転する頃は一部のトイレが故障のままという状態が続いていました。

しかし掃除は行き届いており、比較的大きなゴミも引き受けてくれたので便利でした。また、事務所の使い勝手は、スペースが広く、会議室や執務室が今より広々していたように記憶しています。

なお、令和6年4月の株式会社テーオーシーの発表によると、昨今の建築費高騰等の理由により、建替着工時期は令和15年頃に変更され、令和6年9月よりリニューアル・オープンの予定とのことです。

今となっては、建替延期とは事務所を移転したのに何だったんだと疑問に思うところもありますが、tocという昭和の殿堂が五反田のランドマークとして延命したことに嬉しくもあります。

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