試験科目の国税徴収法と実務

スキルアップ

1.国税徴収法とは

国税徴収法は、日本の国税(例えば、所得税や法人税など)を確実に徴収するための法律です。税金は国家の運営に必要な重要な財源ですが、全ての納税者が適切に納税するとは限りません。そのため、国税徴収法は納税者が納めるべき税金を確実に回収するための具体的な手続きを定めています。この法律は、納税者が税金を支払わない場合に、どのようにして国がその税金を回収するかを明確にしています。税理士試験においてはミニ税法と呼ばれていて、理論問題がほぼ100%なので、受験を考えた人も一定数いらっしゃるかと思います。

2.国税通則法と国税徴収法の関係

国税通則法と国税徴収法は、どちらも税金に関する法律ですが、それぞれ異なる役割を持っています。国税通則法は、税金の基本的な制度や手続きを定めた法律で、納税者が税金を適切に申告し納付するためのルールを規定しています。一方、国税徴収法は、納税者が税金を支払わなかった場合の対処方法を詳細に規定しています。税金は国家運営における財源であるため、徴収のために強い権限が与えられています。そのため、わざわざ国税通則法に対する特別法として国税徴収法が定められています。

3.滞納するとどうなるか -差押え手続きの具体的な手続き内容-

差押えは、納税者が税金を支払わない場合に、国がその未納税金を回収するために行う強制的な手続きの一つです。具体的な差押え手続きの流れは次の通りです。

催告書の送付: 最初に税務署は納税者に対して催告書を送付します。これは、未納の税金を早急に支払うように促すための文書です。

財産の調査: 納税者が税金を支払わない場合、税務署は納税者の財産を調査します。銀行口座、不動産、動産(車や貴金属など)などが対象となります。

差押通知書の送付: 調査の結果、差押え対象の財産が特定された場合、税務署は納税者に差押通知書を送付します。この通知書には、差押えの対象となる財産やその理由が記載されています。

差押えの実行: 通知書送付後、実際に財産の差押えが行われます。例えば、銀行口座の差押えの場合、その口座から必要な税額が引き落とされます。不動産や動産の場合は、競売にかけられ、得られた売却代金が税金の支払いに充てられます。

実務においては、差押えがされて取引先にその事実が伝わることのないようにする必要があります。税金を滞納する会社は資金力がないとみなされてしまうので、取引が停止されかねません。差押えに至る前に、納税猶予や換価の猶予の手続きを申請することで、差押えに至らずに分割納付をすることができるようになります。

コロナ禍では、急激な資金繰り悪化のために税金を分割納付せざるを得ない顧客もいらっしゃいましたが、国税徴収法を学んでいたおかげで、先手で対策を打つことができ、窮地を脱することができました。

試験合格を目指しつつ、実務にもぜひ落とし込んでもらえればと思います。

※具体的な事案に対して適用する場合は、顧問税理士等にご相談ください。この記事を参考にした結果発生した損害について、筆者及び当社は責任を負いかねますのでご理解のほどお願いいたします。

※2024年4月1日時点の法令等に基づいて執筆していますのでご留意ください。

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